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15年ほど前のことだ。アメリカからの土産として、父におもちゃのボイス レコーダーを
買ったことがある。おもちゃ売り場で見つけたもので、たしか 10ドルぐらいだった。
記憶力の衰え始めている父が、メモ代わりに駐車場の番号や買い物リストを録音したら
便利ではないかと思ったのだ。 しばらくして父と会う機会があり、役に立っているか尋ねると、
「おー、使っているぞ。聞きたいか?」と早速レコーダーを持ってきた。
「わっはっはっは、わっはっはっは」
聞こえてきたのは、父の豪快な笑い声だけ。
意表を突かれた私と息子は、思わず一緒に笑ってしまった。
「こんな使い方があったのか...」

昔、笑いに関する実験をテレビで見たことがある。まず参加者に部屋で 待っていてもらう。
そこへ別の男性が入ってきて向かい合わせに座り、突然 笑い出すのである。
言葉は何も交わさない。ただひたすら笑っているのだ。
最初から部屋にいた人は、何が何だかわからないうちに、一緒になって笑ってしまう。
それを見ていた私も噴き出してしまった。

笑いは伝染する。感染力が強い。私はこのウィルスを日本全国に広めようと目下、
策略中である。「ユーモアスピーチクラス」という表面上怪しまれない名前のクラスを
作っているが、実は、ウィルスを広める媒介人を養成しているのだ。子供のような好奇心、
いろいろな見方を楽しめる柔らかいあたま、 “Oh, NO!” と手を広げ嘆くオーバーなしぐさ、
「かたいノーは、ノー」など脳とNOの駄洒落、はずしてもいいから、
そんな遊び心をもてるひとがターゲット。

ユーモアは、父のように自分がまず楽しむ。自分を笑えること。
「わっはっはっは」を聞いたとき、そう思った。
わたしも父の子、カエルの子。できないわけがない。
「わっはっはっは」菌を全国にまき散らしてやる。

2011年 MARTHA


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